活動・行事レポート

『68歳からの挑戦』 齊藤勝美氏(1974年度工業化学科卒業、同窓会東北支部長)

国際学会『23th ETH Conference on Combustion-Generated Nanoparticles』での受賞を得て

1974年度工業化学科卒業の齊藤勝美です。2019年から東北支部長を仰せつかっています。卒業とともに秋田県に奉職しました。
研究機関に在職していたこともあって,国立環境研究所のPM2.5・DEP(ディーゼル排出微粒子)研究プロジェクト(2001年度~2005年度)に2003年4月から客員研究員として参画し、主にサンプリングと無機性物質の成分分析を行い、2006年度以降もDEPやナノ粒子の研究に携わっています。2017年度環境研究総合推進費の「高感度分析技術に基づく空港周辺における超微小粒子状物質の動態解明」(代表:首都大学東京竹川暢之、2017年度~2019年度)が首都大学東京、国立環境研究所、産業技術総合研究所、民間調査機関の合同チームとして立ち上がりました。この研究にも国立環境研究所のメンバーとして参画しました。
2019年に研究成果の一部を、「23rd ETH Conference on Combustion Generated Nanoparticles(燃焼生成ナノ粒子のスイス連邦工科大学主催国際会議;June 17th -20th, 2019 at ETH Zurich, Switzerland)」おいて、国立環境研究所の伏見暁と私が発表し、高い評価を得ました。また、私は「Trojan Horse Award 2019」を受賞しました。

これによって、国際的評価が高まりZurich University of Applied Sciences (ZHAW;チューリッヒ応用科学大学)の航空機ジェットエンジン研究メンバーから共同研究の打診やSAE E-31 (Society of Automotive Engineers, Aircraft Exhaust Emissions Measurement;航空機からの排出物の測定法及び規制値等)」委員会から参加の要請を受けるなど、一気に国際的な視野が広がりました。

2020年度環境研究総合推進費の「国際民間航空機関の規制に対応した航空機排出粒子状物質の健康リスク評価と対策提案」(代表:首都大学東京竹川暢之,2020年度~2022年度)などが採択されました。この中で、私が国立環境研究所の一員として参加するのは、「民間航空機のジェットエンジンから排出される粒径サイズ100nm以下の超微小粒子の排出実態、化学組成などから粒子の生成メカニズムや気候影響への評価」です。研究はスイスのチューリッヒ国際空港内のジェットエンジンのメンテナンス試験施設(SR Technics Cell)で、ZHAWチームと日本側の首都大学東京と国立環境研究所のチームが共同で行う。私は、超微小粒子の捕集と化学組成を明らかにすることです。

ZHAWの研究チームとの研究打合せとSR Technics Cellの見学を兼ねて、1月9日~10日に大学の所在地「ウィンタートゥール」とSR Technics Cellを訪問しました。13日~17日にカーディフで開催された「SAE E-31」の委員会に参加しました。SR Technics Cellは、各国のエラーラインからの依頼によりジェットエンジンのメンテナンスとエンジン試験を行っており、この施設で行われるエンジン試験のデータ収集とデータ解析は欧米の研究機関及び大学が行っています。
SR Technics Cellでは厳しい入出管理(パスポートの確認)と持ち物のX線検査を行っており、写真撮影やメモをとることも許されません。同窓会本部から「大学のロゴ入りパーカー」をきて試験エンジンの前で写真を撮ってという要望が出されましたが、そんな状態ではなかった。フェンスの外から写真を撮るのが精いっぱいである(Phot 1)。Phot 2はZHAWのメインビルデングの入口で,ZHAWのメンバーと撮影した写真である。ZHAWのメンバーは航空機に特化したSchool of Engineeringの所属である。

カーディフには、11日の朝ウィンタートゥールからチューリヒ国際空港、そこからヒースロー国際空港に飛び、ロンドンからカーディフまで列車で移動しました。約10時間の長旅です。
委員会の会場はCardiff Universityでメンバーは54名、うち日本からは私を含めて3名である。ただ、我々3人はオブザーバーで、発言は許されるが、採決権はない。委員会は円卓方式で、正式会員のみが円卓に座ることができます。各部門からの報告プレゼンが行われ、報告が終わってから質問やコメントが行われると思いきや、報告の途中でも質問やコメントが飛び交い、それに報告者は対応する。こんな状態であるから、一つの報告に30分以上も要する。報告への質問やコメントが出席者のみかと思いきや、出席できなかったメンバーからはWebを通して行われます。報告プレゼンもWebで行われる。これが世界標準なのか。日本では考えられない。
なお、2020年2月から「SAE E-31」の正式メンバーとなりました。

齊藤勝美氏 略歴
齊藤勝美氏は秋田県に奉職しながら1994年には秋田大学から医学博士を授与され、退職後の2015年には滋賀県立大学から環境科学博士が授与されました。
1999年には全国公害研協議会会長賞、2002年には大気環境学会技術賞、2009年には日本エアロゾル学会から論文賞「加熱脱着GC/MSによるディーゼル排気及び大気中ナノ粒子の有機成分分析」を受賞しています。また、2016年に国際学術誌の「ANALYTICA CHIMICA ACTA, ELSEVIER」から「Certificate of Reviewing」が授与された他、昨年、2019年には「23rd ETH Conference on Combustion Generated Nanoparticles」において「Trojan Horse Award 2019」を受賞しています。
まさに、環境問題の最前線で活躍している。                 (同窓会本部記)


Phot 1 フェンス越しのSR Technics Cell

Phot 2 ZHAW1のメンバーとZHAWのメインビルデングの入口において 左から国立環境研究所の伏見主任研究員、筆者、首都大学東京の竹川教授、Dr. Lukas、Dr. Julien

Phot 3 SAE E-31 (Society of Automotive Engineers, Aircraft Exhaust Emissions Measurement;航空機からの排出物の測定法及び規制値等)の委員会の会場(Cardiff University)にて
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